【インタビュー】前野 隆司氏&マドカ氏|幸福学|慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科

【ウェルビーイング】忙しくても“幸せ”を感じる⽣活の送り⽅
〜忙しさと疲れはココロから〜

 女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律「女性活躍推進法」。2016年4月に施行された10年間の時限立法で、2019年5月29日に一部改正する法律が成立しました。当初、300名以下の事業主は努力義務とされていましたが、2022年6月より、101名以上の事業主へも義務化されました。

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【女性活躍推進法】改正

 そんな中、“仕事と家庭の両立”など、女性の「忙しさ」が増加し、ストレスや疲れが増えている中で、幸せな生活を送るにはどのように働けば良いのか。そこで、近年話題の「ウェルビーイング(Well-Being)」に注目してみました。

 今回、幸福学研究の第一人者でもある前野隆司先生(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授)と前野マドカさん(同研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員)のご夫妻に、忙しい女性に贈るウェルビーイング向上についてHAPPY WOMAN代表の小川がお話を伺いました。


前野 隆司氏

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
兼ウェルビーイングリサーチセンター長

東京工業大学卒。東京工業大学修士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow,ハーバード大学Visiting Professorなどを経て現職。著書に『脳はなぜ「心」を作ったのか』『思考脳力のつくり方』『幸せのメカニズム』『幸せの日本論』『幸せな職場の経営学』『感動のメカニズム』など多数。幸福学(Well-Being Study)の研究者。

前野 マドカ

前野 マドカ氏

EVOL株式会社 代表取締役CEO

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。国際ポジティブ心理学協会会員。サンフランシスコ大学,アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て現職。幸せを広めるワークショップ,コンサルティング,研修活動及びフレームワーク研究・事業展開などを行なっている。著書に『月曜日が楽しくなる幸せスイッチ』『ニコイチ幸福学』などがある。


幸福度ランキングとジェンダー・ギャップ指数の上位は同じヨーロッパ勢

―国連が発表した、「世界幸福度ランキング2020」で日本は前年より4つ下げた62位(156カ国中)。1位は前年と同じくフィンランド、2位はデンマーク、3位はスイス、4位はアイスランド、5位はノルウェーと上位はヨーロッパ各国が占めています。どのような違いがあるのでしょうか?

前野隆司氏(以下、隆司氏)ランキング順位は先進国中最下位ですが、日本人は決して不幸だとは思いません。日本人は国民性により、アンケートに低めに回答する傾向があります。また、調査方法そのものに欧米のバイアスがかかったものが多い(必然的に日本に不利な結果が出やすい)ので、調査方法を見直すことで結果に違いが出るのではないかという研究を進めているところです。

―2019年に世界経済フォーラムによって発表された「ジェンダー・ギャップ指数」でも日本のランキングは低く、前年の110位から順位を下げて153カ国中121位。上位は、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンなど、幸福度ランキング上位の国と同じく、ヨーロッパ各国が占めています。

隆司氏)大切なことは男女の違いをきちんと理解・認識した上で、お互いにその良さを認め合うという意味での男女差のある社会であることだと思います。差はあってもいい。でもそれが、差別という形になると良くないですね。日本においてはその両方が共存していると思います。差別をきちんと排除した上で考える男女それぞれの役割というものがあるのではないでしょうか。完全なる男女機会均等が本当の意味で良いことなのどうかという議論は、きちんとすべきだと考えています。

―「ジェンダー・ギャップ指数」でアイスランドは11年連続の1位。国会議員と内閣の4割が女性。フィンランドは昨年は34歳の女性首相も誕生し、新内閣は19人中12人が女性という顔ぶれ。それに比べて日本は女性の国会議員は10.1%、閣僚は5.3%で女性首相もまだゼロ。

前野マドカ氏(以下、マドカ氏)フィンランドなど、女性議員の数がランキングに大きく影響していることがみて取れますね。
隆司氏)日本はまだまだな面もあります。しかし、過度に日本を悪くいう必要もないし、過度に擁護する必要もないと思っています。

84%の女性が忙しさを感じながら頑張っている

Well-Being

―今回約3,000人の女性に調査をしたところ84%が忙しさを感じていると回答しました。ライフスタイル別に見るとDEWKS、つまり子育てをしている夫婦が圧倒的に多いのが実情です。

また、今回のコロナ渦においての在宅勤務における「夫婦の役割分担」では、夫婦がお互い在宅勤務になっても、家事負担率はそれ以前と変わらず、女性の方が約7割を負担する結果になっています。

隆司氏)男女の家事分担率を見たときに、女性の分担率の方が多いということは、男女不平等社会である可能性が強く示唆されるということです。アメリカや北欧でこのような調査をしたら分担率は50:50、五分五分に近いでしょう。私たちが行った調査では、家事分担率が五分五分だと幸福度が最も高いという統計結果が出ました。女性が高くても男性が高くても良くないのです。すべての分担が五分五分に近い家庭が幸せな家庭なんですね。

とはいえ、我が家の家事は妻の方が多く担当しているんですが・・・(笑)
これは、家事を多く負担してもらう代わりに、妻も仕事をしているので、その作業を手伝ったり、仕事・家事全体としてのバランスを考えて分担しているからなんです。必ずしも家事・仕事を全部五分五分にする必要はないと考えています。「忙しさ」が負担にならないように、全体としての作業量が五分五分になるように話し合いながら進めています。

マドカ氏)私が仕事で作った資料を、最後にポイントを押さえてチェックしてもらったりするのはとても気持ちが楽になります。自分にとって大変だと感じる仕事のフォローをしてもらえることはすごくありがたいことです。

隆司氏)私たちはふたりとも1日16時間くらいは仕事・家事をしていますが、「忙しい」と感じたことはありません。「忙しい」とは「心を亡くす」と書きますよね。私たち夫婦が幸せなのは、忙しいと感じていないからなんです。好きな事をしていることが「忙しさ」を感じない秘訣だと思います。

マドカ氏)やはり朝昼晩と食事の用意をすることは本当に時間がかかります。朝ご飯食べ終わって片付けしたらすぐにお昼ご飯の準備。アンケートの結果にもあったように、「家にいると家事をやって一日が終わってしまう」という意見が出てくるのは実感としてよくわかります。

ただし、私は料理が好きなので、そこに時間をかけてもストレスにならず、逆に仕事とのバランスが取れるんです。
今回、誰もが初めて経験することとなった新型コロナウイルスによる自粛生活の中で、自分だけではなく相手も感じているストレスについてお互いにきちんと話し合い、認識することが大切だと考えます。
よく話し合って役割分担をキッチリ決めることと並んで、こういう時はどうすればいい?とか、こうしてくれてありがとうなど、声掛けすることがとても重要なんです。

疲れているかいないかの差は、やるべきことの量ではなく「心」によるところが大きいのではないかと思うんです。
自分の方がやることが多いと感じたとしても、そのことに対して「ありがとう」の一言があるだけで全く疲れ方は違う。
感情に影響されがちな女性は少なくないと思います。ですから、自分がしたことに対して言葉を掛けてもらい、認めてもらっていると感じられることがとても大切です。

隆司氏)女性も男性も同じで、仕事で疲れてる人も家事で疲れている人も、理由は様々ですが、実は精神的に疲れていることが多いんです。心の疲労というのは結局はストレスによるもの。私たちのように悪いストレスをなくすことができれば、疲れとは無縁になります。料理も楽しい、仕事も楽しい、会話も楽しい。ケンカもしないし、疲れる理由がないのです。

一緒にいる時間が長くてもケンカはしない。その秘訣は?

Well-Being

―お二人のようにどうすればケンカせずに済むのか?そこは皆さん知りたいところだと思います。

マドカ氏)特に外出自粛になった頃からはずっと一緒にいるんですが、ケンカはしませんね。友人たちにビックリされます。

隆司氏)例えケンカになりそうになっても、そうなる前に心にためないで話し合いをして解決するようにしています。
27年間の結婚生活で3回くらいケンカしましたけどね。(笑)でもすぐに解決しました。

マドカ氏)やはり人間は、知らず知らずに相手を苛立たせてしまっていることがあると思うのです。でも私は、1回目はとにかく全部許すことにしています。誰でも間違いはあるし、気づかないこともあるので1回目は。

隆司氏)いやいや、100回ぐらい間違ってても、許してもらってる気がします。(笑)

ー夫婦で日々幸せに生活するには

マドカ氏)夫婦間で一番大切なことは相手への感謝だと思います。

例えば、専業主婦の方は、自分は社会の役に立っていないと思っている人が多いのではないでしょうか。毎日一生懸命家族のために家事、育児を頑張っているのに、それは当たり前すぎて誰にも褒められない。
ずっと褒められないまま、認められないまま、お金を稼いでいるわけではないし、長年そういう中に身を置いていることで、自分自身のことをそんな風に感じていくようになるのです。
特別なことではなくても、毎日の家事や育児をこなしていることに対して家族からの感謝の気持ちを日々感じることができれば気持ちよく頑張れるのではないかと思います。

女性は男性の一番の応援団に、男性は女性に対して、とにかく聞いてあげることがポイントです。

隆司氏)僕たちはいつの間にかできてたね。

―いつの間にかできてるのがスゴいですよね。

マドカ氏)感謝と同じくらい、相手のことを大切に思う気持ちが大事だと思います。大切に思えば、相手の立場に立って考えられます。つまり、「こう言われたら嫌じゃないかな」と考えることができます。これは夫婦間に限らず、あらゆる対人関係でも同じですね。

―私ばかりやらされている、と思う人と思わない人の差って何なのでしょうか?やはり感謝の言葉でしょうか

マドカ氏)夫は、料理などもいつも、「すごく美味しい」とか「盛り付けが綺麗だね」とか、言葉にしてくれます。一緒に食べられることの喜び、その他の様々な喜びをを、口に出して伝え合うことが大事だと思います。

―料理以外にも家事や育児などが多数ある中で、役割分担がうまくできていないことで「自分の時間が取れない」ことに対する忙しさやストレスを感じる人が多いのですが、そうは感じないのですか?

マドカ氏)先ほどの「心」という面で言うと、私はコーヒーとかハーブティーとかが好きなのですが、10分だけでもゆっくり味わう時間を取るようにしています。それが心のリラックスに響いているので忙しいとは思わないのです。
庭のお花を見るとか、自分の心に癒しを与える時間は、長さにかかわらず1日の中で少しでも取るとそれだけで満たされて、忙しさを感じにくくなります。

隆司氏)普段から心を整えることが大切です。例えば、マインドフルネスの瞑想を1時間やって、やっと整う人もいれば、マドカのように1秒で整う人もいます。イライラ、ストレスがたまっている人はゆっくり心を整える時間も取ってみてください。

また、たまには出前を取るとか、家事代行を頼むとかして時間を作り、まずはストレスを減らしてください。あくまでストレスの根源を解決するのが先で、その後で、3分お茶を飲んでリラックスする、という順番だと思います。

マドカ氏)何でも完璧にキッチリやらなくちゃとは思わないで、今日はこれだけしか時間がないから出前を取るとか、買ってくるとか。そうすると、その時間を他にやるべきことに使うことができる。家族のためにキッチリ私がやらなければいけないと思いすぎず、そして家族がそれを快く受け入れてくれることが大切なことです。家族がそのようなスタンスでいてくれることが気持ちをとても楽にしてくれます。

―ポストコロナは新たな日常「NEW NORMAL」時代と言われてますが、さらに時間の使い方が重要になってくると思われます。お二人は実際はとても忙しいのに幸せを感じられるという、そこがポイントだと思います。

隆司氏)忙しくないですから。
よく、お忙しい中ありがとうございますとか言われますが、全然忙しくないです。むしろ暇です。(笑)

マドカ氏)でも、スケジュールは驚くほどビッシリ入ってますけどね。

隆司氏)忙しくはないですよ。先ほども言ったように「心が亡くなる」ことが「忙しい」。 全部、心が満ちているから、忙しくはないのです。

―女性も男性も、忙しいと感じながら生きている人が多い中で、幸福学、ウェルビーイングはますます大切になってくると思いますが。

隆司氏)先ほどのアンケート結果にもあったように、収入や地位が上がっても幸せを感じられない人が多くいます。
幸福度を高めるには、私が研究した「幸せの4つの因子」が参考になります。収入や地位が上がることによる幸せは長続きしない幸せです。一方自由な時間で好きなことを楽しむ時間があるとストレスも減り、幸せになるのです。

幸せの4つの因子

①「やってみよう」因子:自己実現と成長
夢、目標、やりがいを持ち、実現に向けて努力、成長を続ける。


②「ありがとう」因子:つながりと感謝
多様な人や社会とつながり、親切にし、感謝をする。


③「なんとかなる!」因子:前向きと楽観
物事を前向きに、楽観的にとらえる。


④「ありのままに!」因子:独立と自分らしさ
他人と比較せず自分らしく、自分軸を持って生きる。

今回のコロナウイルスの件で、無理やり手放したものもあるでしょうが、これからは何を手放すかを考えるといいと思います。お金や地位のためにやりすぎていること、家族のためにやりすぎていることを少しでも手放して、その隙間ができたところに幸せを流し込むというふうに。ガチガチになってるものを少し減らしてから考えたほうが良いのです。

―最後に、頑張っている女性たちにエールをお願いします。

マドカ氏)誰かの助けになっていたり、家族が喜んでくれたりすれば時間をかけて頑張ったことが報われ、忙しくても幸せを感じることはできます。また、相手を心から信頼していれば、多少の言葉の間違いなどを気にせず、怒ったりイライラしたりすることなく過ごすこともできます。その、心からの信頼は、時間とともに積み上げられてきたもの、相手から与えられてきたものでもあります。相手を褒める、感謝するという積み重ねが大切です。

隆司氏)誰もが頑張っている。そのことを認めてくれる人がいれば、幸せ感を感じられます。「自分ばかり」になりがちな人は、みんなが頑張っていることを認め合うようなマインドに切り替えられるとよいですね。そのためには、とにかく相互コミュニケーション。また、今の自分の状態をこれで良いと肯定することもポイント。相手を褒めるだけでなく、頑張っている自分を認めて、自分で褒めることも重要ですね。自分とのコミュニケーションです。


とても仲の良い、素敵な前野ご夫妻。

お二人のお話には、「幸せの4つの因子」の考え方が根底にありました。

「男女平等」「役割分担」など、いろいろな言葉がありますが、ポイントは「感謝し」「お互いを認め」「行動する」ことが重要なのかもしれません。家事と仕事をどう分担するのか、ではなく、まずは「GIVE」の精神が重要ではないでしょうか。
家事に育児に仕事に、毎日「忙しい」と感じながら生きている中で、率先してやる「行動」や一言の「ありがとう」があれば、夫婦だけなく、職場でも幸せに働くことができると思います。
今日からは、「忙しい」という言葉を使わないようにしてみませんか?
「忙しい」は「心を亡くす」ことですから。

今日がこれからの人生の中で一番若い日。HAPPYに過ごしましょう。


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