【国際女性デーインタビュー】久野浩子氏｜森永乳業株式会社常務執行役員サステナビリティ本部長

男女ともに、キャリアオーナーシップをもてる社会に

PROFILE

新卒で素材メーカー勤務後、証券業界にて証券アナリスト業務に従事。その後、外資系証券会社にてセルサイドアナリストとして医薬品・ヘルスケアセクターを担当。
2002年、国内医薬品メーカーに転じ、投資家向け広報などを担当。2016年より森永乳業へ入社。2019年広報IR部長、2020年執行役員昇格、2021年6月より現職

これまでのキャリアについてお聞かせください。

　私が大学を卒業したのは、男女雇用機会均等法が制定された１９８５年のことです。「女性は３年ほど働いたら結婚して“良い奥さんになってください“なんて言われるような時代でしたから、今日まで企業で仕事を続けていることを当時は全く想像できなかったです。
新卒で入社したのは、前年に採用した先輩が活躍されていたという化学系の素材メーカーでした。そこから転職した証券会社では、企業調査チームで働いて、いわゆる「アナリスト」という仕事をした後、国内医薬品メーカーのＩＲ（投資家向け広報）に転じました。森永乳業に入社したのは２０１６年で、そこからまた新しいチャレンジを始めました。

森永乳業は、２０２３年にウェルビーイングステートメントを定めていますが、背景や狙いは？

　２０１７年に創業１００周年を迎え、「かがやく“笑顔”のために」というコーポレートスローガンに一新し、経営理念や行動指針を見直したのがきっかけです。私たちがこれまで提供してきた健康でより良い生き方を広い概念で価値をしっかり見える状態にしたいという課題がありました。また、他社も事業を健康志向にシフトするなか、当社ならではの独自性を示していきたいと考えました。一方で社員満足度や社員の健康を重視する「健康経営」が台頭するなど、世の中が動くなかで思考を巡らせていたとき「ウェルビーイング」という概念に出会いました。
この言葉には、お客様だけでなく社員の存在も入りますし、私たちが持っていた「おいしさと健康」両方を大切にするという独自のコンセプトを言語化できると考えました。

新たな気付きなどはありましたか？

　食品製造業の中でも、当社は製造現場で働く社員のウェイトも高く、想像以上に力仕事が多いと思います。また、工場はシフト勤務で夜勤があるので、女性が工場勤務をするのは、厳しい環境なのではという意識が社内ではありました。しかし、良かれと思ってやってきた女性への配慮が、むしろＤ＆Ｉ推進の足枷になっているのではないか。多様性を目指すならば女性社員を保護すべき対象に留めておくのではなく、男女ともに活躍できる職場環境を整えないといけない局面に来ていると考え、女性も働きやすい環境づくりに着手しています。人手不足の時代、女性活躍推進は、女性のためだけではなく、企業が生き残るために必要なことであることを、理解していくことが求められます。

Ｄ＆Ｉの観点からどんな取り組みをされていますか？

　２０２２年の「産後パパ育休」の法改正に合わせ、有給１００％取得を目指した育児休業制度を導入しました。男性社員の育休取得率を増やすために、法定以上の１００％有給としました。その結果現時点で、育休取得率１００％を達成しています。これまで日本の終身雇用を前提とした人事制度は男性はキャリアを途中で降りられず、出産・育児でキャリアを降りた女性は降りたままという状態が多くありました。上の世代は男性の育休は特別なものという方のほうが多いと思いますが、まず役職者から取得は当たり前という雰囲気づくりをしていければと思います。そして今後は男女ともにライフイベントと仕事をどう両立していくか各々がキャリアオーナーシップを持って考えられるようになれればいいですね。

久野さんのハッピーの源は？

　笑顔ですね。つらいことがあっても意識して笑顔にしてみると楽しくなったりしますよね。中学生の頃にある人から「いつ見ても笑っているよね」と言われて、笑顔がそんなに人の印象に残るものならばそれは大事なことなんだろうと思った記憶があります。生きていく上で人との関わりは大事だと思うので、コミュニケーションの役割は重要です。公私ともに笑顔を大事に、そんな気持ちはいつまでも忘れずにいたいですね。