根本 かおる氏|国連広報センター|インタビュー

ちがいや多様性を力の源泉にできる社会へ

報道の世界から、国連での難民支援活動、フリージャーナリストと、常に関心のある新しい世界へ飛び込み、フィールドを広げてきた根本さん。
マスコミと国連、二つの分野で重ねたキャリアを活かし、国連の活動を、日本へ広く浸透させるために力を尽くしている。

現在のお仕事に就いたきっかけは。

「テレビ局の仕事を経て、96年から2011年まで国連難民高等弁務官事務所で難民支援を中心に活動し、その後一旦国連を離れフリーで執筆や講演などの活動を行っていました。その頃に東京の国連広報センター所長が公募されていることを知り、国連とマスコミ、自分の今までの経験をトータルに活かせる仕事だと思い応募しました」

昨年は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」推進のために吉本興業とパートナーシップを組み話題になりました。
「広報センターの仕事は、いかに国連の取り組みについて日本のみなさまに知っていただくかですが、国連の目標というと、〈国連と政府がやるもの〉と思われ、なかなか関心を持っていただくのが難しい。まずは敷居を低くして興味を持ってもらうために、エンターテイメントの力をお借りしました。笑うことは人の気持ちをオープンにしますし、今の芸人さんたちはキャスターやコメンテーター、作家や役者などマルチに活躍し発信力を持っています。その効果もあってか、SDGsの浸透も徐々に広がってきたと思います」

SDGsの「17の目標」の一つに、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」があります。現在の日本の女性活躍推進の動きはどう感じますか。

「ゆるやかに進展はしていますが、スピード感が足りないかな、というのが正直な感想です。国連では昨年就任したアントニオ・グテーレス事務総長が『ジェンダー平等は自分にとって最重要課題。最も早く着手する』と方針を打ち出して女性の登用を猛スピードで進め、約1年で民間企業でいうと役員クラスにあたる幹部職員の完全な男女同数を達成しました。トップが自ら行動し、目標の実現は可能なことを示した一例です。

より多くの女性が活躍する社会になるためには、育児や介護などをしながら働き続けられる仕組みが不可欠。私自身、介護を経験したことから、制度や周囲の助けなしには両立は成立しないと実感しました。

本来制度というのは、人が働きやすくするために作るもの。しかし日本では制度が先で人がそれに合わせる風潮があり、その結果ひずみが生じています。政治や企業のトップが、これまでの画一的な考え方から脱却し、多様な人の立場を理解できる視点を持ち柔軟に制度を変えていかなければ、なかなか改革は進まないと思います」

今後の目標を教えてください。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、SDGsの考え方を本格的に大会計画に落とし込める初の夏季五輪。運営計画に『持続可能性』という視点を組み込んでいます。大会をきっかけとして、障がいのある方やLGBTの方など、どんな人も社会に参画しやすいまちづくりが進み、誰もが自分らしく生きることができる社会へと一歩進む後押しをしていきたいです。

ちがいや多様性を受け入れるだけでなく、さらに力の源泉にできる社会が理想。多様性のあるチームだからこそ気づくビジネスチャンスもあるはずです。女性にもともと備わった共感力やコニュニケーション力を活かして、もっと社会やビジネスの中心でのびやかに活躍していくことは、そうした社会の実現に近づくことになると確信しています」

根本 かおる

Profile

根本 かおる

国連広報センター所長

1986年テレビ朝日入社。アナウンサー、記者を経て米コロンビア大学大学院にて国際関係論修士号取得。1996年から2011年末までUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。WFP(国連世界食糧計画)広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリー・ジャーナリストを経て2013年より現職。

SDGs

「持続可能な開発目標(SDGs)」

Sustainable Development Goals

2015年に150を超える加盟国首脳参加のもと採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる17の「持続可能な開発目標(SDGs)」。