幸せの受容体をたくさん持ちましょう!
ITカンファレンスやプライベートショーのプロデュースなどを数多く手がけるウィズグループ代表の奥田さん。2012年からは地方産業や高齢者×IT事業の立ち上げ、また海外と地域をつなぐ新たな事業など、30以上もの事業を展開、常に躍進し続けている。女性経営者として、そして母としてのこれまで歩みや今後の展望などについて奥田さんにお話を伺いました。
− ウィズグループの活動について教えてください。
ウィズグループは私が手掛けている30位の事業の母体となる会社で、2001年に設立しました。ITカンファレンス事業でも一般的なイベント会社とは異なり、セミナー開催に伴うマーケティング支援や顧客データ管理などをメインに、イベントの事務局として運営の中枢を請け負う事業です。
イベント事業を行う中で、講演者やキーパーソンとのネットワークが構築されていき、IT産業界のハブのような会社になっていきました。ここが私の抱えている事業の主体、利益を生み出すという意味では中心の部分となっています。
− 会社を設立したきっかけは?
国際会議の会社に勤めていた頃、アメリカのカンファレンスに行くと、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツがステージ中央に立って、製品説明ではなくビジョンを語るという事をイベントで見せていたんです。そこから製品を行き渡らせるというセミナーの形は90年代初頭の日本にはまだなかったので、日本でも再現できるのはないかと、そこに特化した産業を作ろうと思ったのがきかっけですね。バーコード、ICカードの入場システムなど、日本にはないものを取り込んでいき、イベント産業の中でもニッチな部分を作り上げていきました。
91年に立ち上げた事業は、ITバブルもあり仕事が倍々ゲームのようにどんどん膨らんでいきました。その後2000年に出産、事業を続ける上で数字と実績を拡大していくには、私生活を追いやらないと産業が成り立たない状態でした。そのことに矛盾を感じて、自分の抱えているものを小さくするために、出産1年後に設立したのがウィズグループでした。
− 会社経営と子育ての両立での苦労や思い出などを教えてください。
事業を縮小するためにウィズグループを設立したとはいえ、仕事は次から次へと入って来る。今度は「何のために仕事をするのか」という軸を持つようになり、次世代にこういう会社があったらいいな、こんなサービスがあったらいいな、と考えて仕事を選ぶようにしました。作りたい未来のために必要な要素って何?どこでも仕事ができる環境って?テレビ電話システムは必要だよね、といったように、自分も未来を一緒に作っているという気持ちになれる仕事をしていきました。
今、働き方改革ということが言われていますが、それはもう20年も前から仕事と子育ての両立に身につまされてきた女性たちが、自分のこと解決するためにやってきた事で、改革と思ってやってきたことではないんです。子育てしながら働くには、どこでも働けないと子供が育てられない。どこでも働けることが、ポリシーや社会現象ではなく、お母さんたち個人として絶対に必要なことなんです。
私たちより前の世代の女性達が、必死に戦ってこじ開けてくれた扉を開けておくのが私たち世代の使命。自分だけが通るのではなく、後の世代のために道を作る。扉が開いた時に真っ先に飛び込んで、その扉をあけていてあげよう!というのが私のミッションだと思っています。
これは私の行動指針である、ガンジーの「be the change」自分が変化そのものになる、ということが根底にあって、インドで過ごした大学時代の経験が今の自分に全て繋がっているのだと思います。
− 今後やってみたいことや興味のあることは何ですか?
2012年から地方で「たからのやま」という事業をスタートしました。地域で産業を起こしたり、高齢者×ITの事業など、地域でできる事を色々と立ち上げています。私は鹿児島の田舎で生まれ育って、小さな頃から何か不条理なものを感じて育ちました。地方で事業を起こしたのは、人間は生まれた場所に縛られず、どこでも生きていけるチャンスが作れる、という思いが根底にあります。さらに言うと、どこでも働ける、地域から更に生まれた国、自分の所属する国を超えたもっと大きな動きに、今はすごく興味があります。
− 女性がイキイキワクワク輝くために必要だと思うこと。
今まで女性が良しとしていた価値観が社会の価値観として広がってきています。女性は深く考えず自分の心地よい状態を保って、おおらかでいれば未来は明るいと思います。「目標達成=幸せ」の時代はもう終わり、これからは1日の終わりに今日も幸せだった、と思える人がずっと幸せになれる時代。瞬間瞬間の幸せの受容体を増やしていくことが大切ですね!
Profile
奥田 浩美
鹿児島生まれ。インド国立ボンベイ大学(現州立ムンバイ大学)大学院社会福祉課程修了。1991年にIT特化のカンファレンス事業を起業し、数多くのITプライベートショーの日本進出を支える。2001年に株式会社ウィズグループを設立。2008年よりスタートアップと呼ばれるITベンチャーの育成支援に乗り出し、スタートアップのエコシステムビルダーとしての活動を開始。2013年には徳島県の過疎地に「株式会社たからのやま」を創業し、地域の社会課題に対しITで何が出来るかを検証する事業を開始。地域と海外を繋ぎ、新しい事業を生み出す活動も行っている。
情報処理推進機構(IPA)「IT人材白書」検討委員
「未踏IT人材発掘・育成事業」審査委員
内閣府「アジア・太平洋輝く女性の交流事業」委員
総務省「地域情報化アドバイザー」