キャリアとは
「キャリア」という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。職業、仕事、職務履歴など様々ではないかと思います。「キャリアアップしたい」、「キャリアプランを描きたい」など、「キャリア」という言葉は、仕事をしている方にとって日常的に使う言葉でしょう。しかし、これらの言葉の意図が「職種を変えたい」なのか、「収入を上げたい」、「役職が欲しい」、または全く別のことなのか。何を意図しているのかが人によって異なります。
社会人になると、業務について研修やOJTで上司や先輩に指導してもらう機会は多くありますが、キャリア形成について触れられる機会はそう多くはありません。それもそのはず。会社が社員に求める仕事上の役割はあったとしても、その人を取り巻く環境や大切にしている価値観が異なれば、キャリアの築き方も異なるからです。
キャリアとは、「人が生涯を通じて関わる一連の労働や余暇を含むライフスタイル全体のこと」と捉えられるため、それらを切り離して考えることはできないのです。人の人生に関わるからこそ、この「キャリア」に関して悩む機会は多いのではないでしょうか。
子育ての期間は、キャリアのブランクになる?
私は人事に16年間在籍する中で、以前社員の産前休業前や育児休業明けの面談を担当し、スムーズな休業への移行と職場復帰ができるようにサポートをしていました。現在も人事として研修や個別の相談などで関わる機会が多くあります。個々の仕事に対する考えやライフスタイルについて、様々な価値観があることを知りました。
その中で「休業することでキャリアが築けなくなる」や「仕事を頑張りたいが、育児との両立ができるだろうか」という不安の気持ちを受け取ることがあります。仕事から離れる期間、仕事と育児を両立する期間をキャリアのブランクと捉えている方が多くいらっしゃったのです。
確かに職業履歴としては、この期間がブランクになるかもしれません。しかし先述した通り、キャリアは「人が生涯を通じて関わる一連の労働や余暇を含むライフスタイル全体のこと」であることを考えると、子育ても大きな経験となり、キャリアにブランクができるという解釈とは異なった捉え方をすることも可能です。
子育てで磨かれるスキルがある
子どもの心と身体を守るため、日々子どもに向き合っている瞬間、自分のスキルのことを考える余裕はないと思います。ただ、子育てをしている皆さんが日々行っていることは、どれも仕事や生活をしていく上で必要なスキルばかりではないでしょうか。
■タイムマネジメント
子どもの遊びや食事、睡眠の時間を確保するために工夫されていることがあると思います。保育園の送り迎えの時間に合わせて、どのように時間内で仕事を効率的に進めるかを考えたり、通勤時間などの隙間時間を使って家庭の用事を済ませたり、仕事のアイディアをまとめたり、時間の使い方が上手になっていきます。
■段取り力
幼い子どもを連れて、思いついてすぐに外出をするというのは難しくなります。子どもが遊べるものがある場所か、お手洗いが近くにあるかなどの下調べから、食事やお昼寝の時間や必要な荷物の準備まで、子どもを連れての外出には段取りが必要になります。仕事も段取りを考えて進めることで効率よく進めることができます。
■コミュニケーション力
子どもと会話ができるようになると、子どもの心に寄り添う際やルールを教える際など伝え方を工夫する必要があります。自我が芽生えた子どもに、話を聞いてもらうことが難しい状況に何度も直面しました。分かりやすい言葉遣いや話す順序など、伝わる伝え方を工夫するようになったことは、大人とのコミュニケーションをとる上でも十分に生かすことができます。
上記はあくまで一例でしかありません。子育ての期間をキャリアのブランクと捉えるのではなく、成長していくためのスキルアップの機会と捉え、仕事に活かしていくことは可能です。実際、多くの育児をしながら働く社員が限られた時間の中で活躍している姿を見ており、それは年齢や性別に関わらず大きな影響を与えています。
自分と向き合う時間をもつ
子どもは成長をして、親の手を離れていきます。その頃に差し掛かると、今度は改めて自分自身は何をしたいのか、どんなキャリアを歩んでいきたいのかを考えるようになります。その時、子育てで培ったスキルは決して無駄になることはありません。
「一人の人間としてどう社会と繋がって、どう貢献をしていくか。」それは人それぞれ異なってよいものです。自分と向き合う時間を持ち、それを自分の家族や仲間と共有することで更に自己理解を深め、自分らしいキャリアを歩んでいっていただきたいと思います。
新卒からアパレルメーカーにて勤務。販売職にて接客サービスを学んだ後、現在人事として採用、配属、教育、評価など幅広く携わる。人事歴は16年。二児の母。