我が子のネット・ゲーム・SNS・スマホ使用|やりすぎたら依存症なの?〜デジタルテクノロジーと行動嗜癖〜

我が子のネット・ゲーム・SNS・スマホ使用|やりすぎたら依存症なの?〜デジタルテクノロジーと行動嗜癖〜

我が子のネット・ゲーム・SNS・スマホ使用|やりすぎたら依存症なの?〜デジタルテクノロジーと行動嗜癖〜

デジタルテクノロジーの進化に伴い、私たちの日常生活は大きく変わりました。特にスマートフォン(スマホ)やゲームの普及は、大変便利な一方で、新たな「行動嗜癖」とよばれる依存症の問題も引き起こしています。特に電子機器の使用が低年齢化し、10〜20代の若い方のご相談があとを絶ちません。

私は大学病院のネット依存外来でゲーム行動症に関する診療・研究を行っています。依存症・行動嗜癖は「予防ができる精神疾患」であり、正しい知識を持ち、適切な対応をしていくことが大切です。本記事では電子機器を使用するお子さんや親御さんに知っておいてほしいことをご紹介したいと思います。

ゲーム行動症の症状

2019年に、世界保健機関(WHO)によってゲーム行動症(ゲーム依存症)が正式に病気として認められました。ゲームのコントロールができず、日常生活でゲームが最優先になり、生活に大きな支障をきたしている状態を指します。ゲーム行動症では次のような症状がみられます。

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なぜ目先のことしか考えられないのか?依存症の脳の仕組み

私達は、「報酬」(嬉しいと感じるもの)が「たくさん」「確実に」「すぐに」もらえるほど、価値が大きいと考えます。ゲームでは友人との親和欲求、敵を倒しレベルアップするといった優越欲求、達成欲求などの欲求を「すぐに」満たすことができます。一方で、ゲームを控えめにして勉強をすると成績が上がり、将来の選択肢が増える、という自己実現欲求を満たすには、年単位での時間がかかります。別の例でいえば、ご馳走を目の前にしたときに、「今たくさん食べて、将来的に体重が増える」か「今は食べ過ぎを我慢して、将来的に美容健康的な体になる」の選択を迫られる場合。今すぐもらえるものの価値を高く感じ、時間が経過するほど得られるものの価値が低く感じられることを「時間割引効果」と呼び、依存症の人ではこの割引効果が大きいといわれています。

計画をたてる前頭前野(ブレーキの働き/実行システム)と、報酬系を司る大脳辺縁系(アクセルの働き/衝動システム)のパワーバランスにより私達は様々な意思決定、行動選択をしています。特に若い方では脳が発達段階にあることに加え、ゲーム行動症ではこのバランスが崩れてしまい、自分の意思では行動のコントロールがきかない状態になってしまいます。(Bechara, 2005)

現実世界へのモチベーションを引き出す

「ゲームをやめなさい」「お前の人生はお先真っ暗だ」といったような、命令、批判、脅しや、ゲームの取り上げといった強制措置は、かえって無気力や、暴力の激化、ゲームを手に入れるための非合法的手段(盗難等)といった別の問題を招くことがあります。ゲームは表面的な問題であり、「不安や気分の落ち込みを解消するため」に自己治療目的でゲームを使用している人のほうがより重症度が高くなります。
対策として次のようなことを提案しています。

  • 「自立とは、依存先を増やすこと」ゲーム以外にできるストレス発散方法や趣味を見つける
  • 「自分を客観視する」生活の中での目標をたて、達成度をモニタリングする
    (高すぎる目標をたてないこと)
  • 「意思は薄弱、仕組みは強固」コントロール障害は意思の力では対応困難。ゲームができない予定を入れるなどの対策をとる
    保護者や周囲へは、

  • 「少しのことでも褒める、感謝する」過度な期待をすて、過去の一番悪い状態と比較して少しでも良いところを褒める
  • 「Iメッセージ」深夜までゲームをしている場合に、「ゲームを辞めなさい」ではなく「睡眠不足で体調が悪くなるのが心配だ」と自分を主語にした言葉かけを

このような対処や関わりにより、自己の客観視ができるようになり、自己肯定感を高め、問題に自分は対処できる、という自己効力感を高めることができます。

過保護であることはかえって逆効果という報告もあり(Gong J, 2022)お子さんの自発的なモチベーションを引き出すことが重要ですが、叱責ばかりではやる気を削いでしまいます。

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早期発見・早期介入と今後の展望

依存症は生活に重度の支障が出てから診断されますが、学校の留年や中退以前に、遅刻の増加や成績低下の時点で介入するほうが回復に必要な時間と労力は少なくて済みます。しかし、軽い問題で学校や仕事を休み精神科を受診することは負担が大きいでしょう。そこで私たちはアンケートや使用時間のデータを使ってリスクを早期に察知し、AIベースの支援を行うシステムを開発中です。相談機関が身近にない状況でも初期介入ができ、安全にデジタルテクノロジーの利益を享受できる社会を目指しています。

【記事】小林 七彩(精神科専門医/医学博士/産業医)
宮崎で生まれ育ち、関東で急性期、依存症、睡眠、児童等精神科医療を幅広く学ぶ。スマホアプリを用いた依存症患者の行動記録に関する研究で博士号取得後、大学病院で臨床・研究・教育に携わる。プライベートは食と猫と漫画に嗜癖傾向あり。
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