子育ては、まるで未知の冒険のようなものです。
喜びと困難が交錯する日々の中で、常に新しい発見と驚きに満ちた体験を重ねることのできる経験です。その旅路において、絶対的「正解」は存在せず、時代や文化、個々の子どもの特性によって育児のスタイルや価値観は大きくことなっているのもまた事実です。
私の家では、最近インドネシアからの高校生を2日間受け入れる機会がありました。彼らと一緒に日本文化を体験する経験として、書道や自然素材を使ったアート作りを行いました。そんな中、インドネシアの先生が驚いたのは、子どもたちが、ノコギリやトンカチを使っていることでした。
インドネシアでは、子どもらに危険な道具を持たせることはなく、安全(怪我をしないこと)を最優先に考えるのが一般的だそうです。
このエピソードは、日本の多くの家庭でもみられる考え方です。
一方、我が家の方針は、命に関わらない程度の危険を伴う体験も含め、「体験」を非常に重視しています。少しの怪我は成長の一部と考え、子どもたちが興味を示したので、2歳の頃からノコギリやトンカチを持たせますし、マッチも使わせています。
幼い子どもたちの好奇心は無限です。大人の視点で「危険」と判断されることでも、子どもにとっては貴重な学びの機会にもなりえます。
幼子の小さな好奇心を大切にするということ
ノコギリや火を使わせるなんて怪我したらどうするのだ?というご意見もあると思いますので、もう少し身近な小さな好奇心について触れてみたいと思います。
「幼子が何かを舐める。手で触って、口に入れる。」
この行為は、彼らが世界を理解しようとする自然でとても大切なプロセスです。それを「汚い!だめ!」「こぼれる、汚れる!だめ!」「静かにしててもらいたいから、動画を見せながら食事をさせる。」など、子どもの好奇心を抑え込むことをしている場面に出くわすことがあります。
こぼれたら、大人が拭けばいい。子どもが騒いで困るなら、騒いでもいい場所を選べばいい。
子どもたちの五感は、世界に向けて全方位的に、開かれています。その瞬間に感じた「やりたい」を尊重し、できる限り自分で行動できる環境を整えることが大人の役割だと娘の幼稚園で、教わりました。
「幼子のやる気を奪わない」ことが一番大事。
寄り道も大好きな子どもを見守れる余裕を持つ、手を出さずに見守ることを大人も、練習し日々過ごしていく。そのことで、子どもたちは自立心を育んで行くだけではなく、大人も変化をし、頼もしいチームを親子で作ることができると実感し始めています。
幼少期の体験は肝
幼少期の体験は、その後の人生に大きな影響を与えます。私は長く、経営者を中心とした大人の研修事業に携わってきました。多くの人々が深い根っこの方で、幼少期の経験に基づく悩みを抱えていることを感じます。
「あの時こうして欲しかった」「あの人からああ言われて傷ついた」「褒められたかった」「ここぞという時に、自信がない」といった悩みを聞くたびに、幼少期がいかに大人の心の形成に大きく影響を与えてるかを毎日目の当たりにしていました。
「幼子が何かを舐める」という一見些細な行為も、「小さな好奇心を行動に移している」大切な機会です。
大人になる過程で、小さな好奇心を行動に移すことを阻まれる経験を積み重ねていったらどうなるか想像できますか? 自分のやりたいこと(好奇心)が湧かなくなったり、分からなくなったり、行動する前に諦めたりするのが当たり前になってしまうかもしれませんね。
新しい時代の教育を探る
新しい時代の教育を考える上で、「手(身体)を動かし、やりたいことに没頭できる」環境づくりと、内発的動機が起きやすい学ぶ環境づくりが必要なのではないでしょうか?
子どもたちは、興味があることに対しては驚くべき速さで知識を吸収します。
例えば、漢字に興味を持たなかった子が、夢中になることを見つけ、それを追求するためには、字を読めたり進学をする必要があると本人が気づき、6年間分の漢字を1年で学ぶことができたという話を聞いたことがあります。
「好きなことがわからない」「勉強が楽しくない」と感じる子どもたちは、多くの場合、体験不足や完璧主義が原因であるように思います。大人や社会が「やってみる」姿勢を示すことと彼らが「やってみる」ことを阻まないことは、現代の教育において特に重要な視点かもしれません。
インドネシアの先生が、日本の子どもたちが道具を使って作っている様子を見て
「このやり方は、僕たちも見習いたい」と言っていたのが印象的でした。
インドネシアの学校では、教科の勉強やテストに偏りがちで、手を動かす体験が少ないそうです。これからは、こうした体験型の教育も取り入れる必要があると語っていました。
最後に、「子育ては、自分育て」という言葉があります。
子どもたちの可能性を信じ、彼らが自分らしく生きる力を育むために、私たち大人も成長し続ける必要があります。子どもたちが独り立ちするまでの貴重な時間を大切に、彼らの成長を見守ることで、思いがけない楽しさを大人たちも、もらっていると感じずにはいられません。
学生時代の海外経験を経て、万博での南米パビリオン勤務、ジンバブエ大使館勤務を経験。その後、12年以上にわたり人材育成の研修イベント運営・営業に携わる。出産を機にシュタイナー教育に出会い、東京から長野県へ移住。現在は「これからの時代の生きる力とは?」をテーマに、次世代の子どもたちの自由な学びと生きる力を育む環境づくりに注力。