運動でがんの再発リスクが下がる? 医師が解説する最新研究|HAPPY WOMAN ACADEMY

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乳腺外科医として外来診療をしていると、術後の患者さんから「運動はしてもいいですか?」という質問をよく受けます。

運動(筋トレ、有酸素運動、ヨガなど)が身体的にも精神的にもポジティブな影響を及ぼすことは、既に多くの方が実感されているのではないでしょうか。では、がん患者さんの場合はどうでしょうか。

これまでのがん領域の研究では、運動をしていない人に比べて、運動をしている人の方が、がんの予後が良好である可能性を示すデータがありました。ただし、これらは主に後ろ向き研究によるものでした。

後ろ向き研究というのは、過去のデータを振り返って比較する研究方法です。運動をしていた人の方が、していない人に比べて、がんの再発やがんによる死亡のリスクが低かったということです。

こういったデータも非常に重要ではありますが、そもそも運動をしていた人の方が、もともと健康状態が良好だったのでは?という疑問がついて回るわけです。

大腸がんの再発リスクが約28%低下? 注目の研究結果

そんな中、2025年に、がん診療に携わる医療者にとって画期的な研究結果が発表されました。

大腸がんの術後の患者さんを対象に、運動プログラムに取り組む群と、そうでない群に分けて予後を調査するという無作為化比較試験です。

無作為化比較試験とは、研究の対象者を無作為(ランダム)に2つ以上のグループに分け、治療法や介入の効果を科学的に比較・検証する試験方法です。

これから経過を追う患者さんを、運動プログラムに取り組む群と、そうでない群にランダムに割り付けていくんですね。これにより、年齢やがんのステージなど、患者さんの背景に偏りが生じにくくなります。

この「無作為化比較試験」という点が、これまでの研究と大きく異なるところです。

この研究では、大腸がんの術後に補助化学療法を終えた患者さん889人を対象に、3年間の運動プログラムを実施する群と、健康教育を受ける対照群に分け、その後の経過を追っています。

運動プログラムでは、早歩きなどの中等度以上の有酸素運動を中心に取り組みました。

結果はなんと、運動群では対照群に比べて、がんの再発、新たながんの発生、死亡を合わせたリスクが約28%低下したという結果が報告されました。

また、8年後の全生存率は運動群が90.3%、対照群が83.2%で、運動群の方が7.1ポイント高い結果となりました。

どうやら大腸がんの術後には、適切な運動プログラムが予後の改善につながると言えそうです。

運動を続けるために大切なのは、周囲のサポート

ところで皆さんは、「健康にいいから運動してくださいね」と言われたところで、今日から運動しよう!と実行できますか?

私は日々の忙しさを言い訳にして、できたとしても数日かな、と思っています。きっと同じ意見の人も多いのでは……?

そんな人たちでも運動を続けやすくするために、この試験ではさらにすごい工夫がされているんです。

それは、専門家が長期間にわたり患者さんに寄り添い、無理なく運動を続けられるようサポートしたことです。

周りのサポートがあれば、つい、さぼりたくなっても「やらなきゃ!」となるのが人間心理。

運動の継続率を高めるための工夫もされているわけですね。

無理なく、自分のペースで。今日から始める運動習慣

私の専門は乳がんですが、乳がんについては、今回の大腸がんの研究と同様の無作為化比較試験によって、運動が再発や死亡のリスクを低下させることを明確に示したエビデンスは、まだ十分ではありません。

しかしながら、適度な運動をした後の心身の心地よさは、皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか。

がんの治療中は普段より疲れやすかったり、抗がん剤の種類によっては貧血になったりと、体調が優れないことも多々あります。無理はせず、運動を始める際には主治医の先生にも確認してみてくださいね。

有酸素運動とは少し異なりますが、私自身も少し前に『筋トレが最強のソリューションである』という本を読みました。

筋トレによるメンタル面への好影響や、健康への投資、生活習慣の改善、そして筋トレは努力が結果につながりやすいことなどが紹介されています。

今回の大腸がんの研究で中心となった有酸素運動とは異なりますが、筋トレも習慣化することで、心身にポジティブな変化をもたらしてくれそうです。

そんな私も、しばらくさぼっていた運動を再開しようと思い、トレーニングを始めました。

トレーニングに行った後は、睡眠の質が上がる、肩こりが改善する、ほどよい空腹感を感じるなど、日常の中での変化を実感しています。

スポーツの秋、皆さんも身近なところから運動を始めてみてはいかがでしょうか。


参考文献

Courneya KS, et al. Structured Exercise after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer. New England Journal of Medicine. 2025;393:13–25.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2502760

【記事】足立未央(外科専門医/乳腺外科専門医/癌薬物療法専門医/遺伝性腫瘍専門医/医学博士))
総合病院で乳腺外科医として勤務。学生時代は軟式テニスに明け暮れ、そこで培った“スポ根精神”で日々奮闘中。最近はフルート演奏や歌舞伎鑑賞など文化的な趣味にシフト。自然の豊かな場所に行くと心が洗われるという。

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