「美しさは、健康な身体の上に成り立つ」
「健康の先に、美しさがある」
みなさんも、このような言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
長く栄養・健康の分野に携わってきた私も、「美しさは健康から」という考えを当たり前のように持っていました。
食事を整え、身体を動かし、十分に眠る。心身が健やかであれば、肌や髪、表情にもその状態は現れます。健康が先にあり、美しさはその「結果」としてついてくる。この考えは、今も私の中にあります。
一方で私は、「美しくなりたい」という気持ちに、どこか抵抗も持っていました。健康を求めることは堂々と言えるのに、美を求めることには「外見ばかり気にしていると思われないだろうか」という気恥ずかしさがあったのです。
ところが今年、私自身が「美」を学び、実践する中で、その捉え方が少しずつ変わってきました。
美は、健康の「結果」であるだけではないのかもしれない。そんなふうに考えるようになりました。
美容は「見た目」だけを変えるものではない
そもそも「健康」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
WHO(世界保健機関)は健康を、単に病気や虚弱がないことではなく、身体的・精神的・社会的に良好な状態と定義しています。
そう考えると、健康は検査値や体重、身体のコンディションだけで測れるものではありません。心が穏やかであること、自分自身を肯定的に捉えられること、人や社会とつながっていることも、私たちの健やかさを構成する大切な要素です。
そして、美容についても「見た目」以外への作用が研究されています。
化粧と感情に関する日本の心理学研究では、スキンケアを「慈しむ化粧」、メイクアップや香りを「飾る化粧」と捉え、化粧が感情に及ぼす影響を「高揚」と「鎮静」という観点から整理しています。化粧は、日常生活の中の「感情調節装置」とも表現されています。
きれいになるためにしていると思っていたことが、実は心にも働きかけている。
そう考えると、美容は「健康の先にあるもの」とだけ捉えなくてもいいのかもしれません。
「自分に手をかける」ことも、セルフケア
美を学ぶ中で印象に残った教えのひとつが、91歳の現役美容家・小林照子先生もおっしゃっている、「自分の手を使う」ということでした。
私たちが生まれたときから持っている、自分自身の手。その手のひらで、自分の顔を包み込むようにそっと触れてみてください。目の際、鼻の横、こめかみ、口元などの細かな部分にも、やさしく触れていきます。
自分の肌に触れ、慈しむようにスキンケアをする。それは、今すぐできるセルフケアのひとつです。
実は、自分自身にやさしく触れる「セルフタッチ」については、心理・生理的な研究も行われています。
自分自身にやさしく触れる「セルフスージングタッチ」を用いた研究では、対照群と比べて、ストレス課題後のコルチゾール値が低かったことが報告されています。
触れるだけですべてのストレスが解消するわけではありませんが、自分自身にやさしく触れることも、心身をいたわるひとつの方法です。
いつものスキンケアを、少しだけ「自分を慈しむ時間」に変えてみませんか?
今夜のスキンケアの時間、まず一度、ゆっくりと深呼吸してみてください。そして、自分の手で、自分の肌に丁寧に触れてみる。
「今日も頑張ったね」
「今日の私も、なかなかいい」
「おつかれさま。いつもありがとう」
そんな言葉を、心の中でつぶやいてみてください。
最後に鏡を見て、眉間や口元の力をふっと緩める。そして、大切な人に向けるように、鏡の中の自分にも微笑んでみましょう。
美と健康は、循環している
――健康な身体が、美しさの土台になる――
そのことは、健康を専門としてきた今も大切にしている考えです。でも今は、もうひとつの方向もあると思っています。
美しくあろうと自分自身に関心を持つ。自分を見つめ、触れ、手をかけ、大切に扱う。その行為が心を整えるきっかけとなり、また自分を健やかな方向へと導いていくこともある。
「健康から美へ」という一方向ではなく、美と健康は互いに支え合いながら循環しているのではないでしょうか。
「美しくありたい」と思うことは、自分自身を慈しみ、よりよく生きようとする自然な欲求のひとつです。美も健康も、誰かと比べたり、競ったりするものではありません。
大切な「わたし」のために。
まずは今夜、自分の手で自分の肌にやさしく触れることから始めてみませんか。
【記事】金子 祥子(管理栄養士・ホリスティックヘルスコーチ)
医療・企業・行政での栄養支援や健康教育に携わる。食事や身体だけでなく、美しさや心、人とのつながりまで含めた、より豊かに生きるための健康を大切に活動している。Instagram:@shoko_becoming






















































