乳癌検診、受けていますか?
私は乳腺外科に勤務する医師です。今日は、医師の観点から皆さんに乳癌検診の知識を共有することを目的にこの記事を書きたいと思います。
まさか私が乳癌に。
「まさか私が乳癌になるとは思っていなかった。」乳癌と告知した時、患者さんから度々聞かれる言葉です。
日本でどれくらいの方が乳癌になるか知っていますか。
年間約9万人、生涯で日本人女性の9人に1人が乳癌になると言われています。
意外と他人事ではない乳癌。
女性の癌罹患数の1位、死亡数では4位です。
つまり、早期で発見、しっかり治療すれば命を落とす可能性は低くなるのです。
早期発見には検診が有効です。
過度に恐れず、しかし侮ることなかれ、というところです。
乳癌検診、何をやったらいいの?40歳以上編
乳癌検診の基本はマンモグラフィです。日本では、各自治体(市区町村)が40歳以上の女性には2年に1回、自治体でマンモグラフィ検診を提供することが義務付けられています。(ただし、開始年齢、マンモグラフィ以外にエコーがオプションで選択できる、費用は無料~少額必要、など自治体によってばらつきがあります。)
乳癌の死亡率を減らすことができるのはマンモグラフィのみとされています。
しかし、マンモグラフィを行ったから絶対安心という訳ではありません。
やせ型、閉経前、授乳経験がない、などの女性は「高濃度乳房」と言って、乳腺組織が豊富な可能性があります。
アジア人は欧米人に比べて高濃度乳腺の割合が高く、40~60%が高濃度乳房とされています。
高濃度乳房の場合、たとえ異常所見があっても見えない可能性(偽陰性)が、通常より高くなります。
こういった場合には、エコーも併用することでより早期に乳癌を発見できる可能性が高まります。
日本でも最近は乳腺濃度を伝える動きも出ているため、気になった場合は医師に乳腺濃度を尋ねてみるのも、今後の検診を決める上で有効かもしれませんね。
頻度に関しては、様々な提言がされています。定まったものはありませんので、あくまで筆者の主観も伴います。
最低限2年に1回のマンモグラフィ、理想は1年に1回のマンモグラフィにエコーを加えること、でしょう。
海外では乳癌のリスク別に分けた検診も始まっています。日本でもこういったものが早期に導入されることを望んでいます。
乳癌検診、何をやったらいいの?40歳未満編
では、40歳未満はどうしたらいいのか。悲しいことに答えはありません。
自分でできる対策としてはbreast awareness(自分自身で触診をして、異常がないかを確かめること)があります。
これは40歳以上にも共通です。月1回、できれば月経終了時の一番乳房の張りがないタイミングで自己触診をしてみてください。
そこで、しこりを触れる、乳頭からこれまでなかった分泌物がある(特に血性の場合は注意)といった場合には速やかに乳腺専門のクリニックにかかることをお勧めします。
もし、何か検診をするのであればエコー検診でしょう。
場合によってはマンモグラフィが有効な場合もありますので、初めて乳癌検診を受ける、あるいはマンモグラフィが有効と過去に言われたタイプの方はマンモグラフィを受けてもいいかもしれません。
ただし、遺伝的に乳癌になりやすい変異がある方は、25歳以上で造影MRIが推奨であったり、30歳代で加えてマンモグラフィが推奨されていたりします。
ご家族、ご親戚など身近な方に乳癌経験者がいて心配、という方は、まずは乳癌罹患者が遺伝的な検査の対象になるかを調べてみてもいいかもしれませんね。
マンモグラフィ、痛くて苦手、被爆も心配…。
これもよく聞かれる声です。
マンモグラフィが怖くて検診受けられないという方は月経周期を見て受けることをお勧めします。
月経2週間前から開始1週間はどうしても胸が張りやすい時期ですので、この期間を避けることをお勧めします。
年1回のマンモグラフィで受ける放射線の被ばく量は体への影響はそこまでないとされています。
最近では自治体の検診に加えて、会社の検診などでも乳癌検診を選択できるところが増えています。
また、乳腺専門のクリニックも増えており、乳癌検診のハードルは下がっていると感じます。
ぜひ乳癌検診を受けて、自分の乳房の状態を知ってみてくださいね。
(外科専門医/乳腺外科専門医/癌薬物療法専門医/遺伝性腫瘍専門医/医学博士)
総合病院で乳腺外科医をしています。学生時代は軟式テニスに明け暮れ、そこで培ったいわゆるスポコン精神で生きています。最近の趣味はフルート演奏や歌舞伎鑑賞と文化系にシフトしています。田舎育ちのためか、自然が豊かなところに行くと心が洗われます。