先日、ある採用面接の場で、候補者の方からこんな問いを受けました。
「働きやすさを重視する場合、会社規模はある程度の基準になりますか」
とても率直で、誠実な問いだと感じました。
先日、ある社員との面談の中で、「キャリアプランが描けないので、退職を考えたい」という相談がありました。今の職場に不満があるわけでもなく、これからやりたいことが決まっているわけでもないとのことです。最初は、会社に対する不満を言いたくないだけではないかと思っていましたが、話を聞いていく中で、主張に嘘はないようで、すでに求人サイトを見始めているとのことでした。
皆さんは、キャリア形成の中で迷いや不安を感じ、悩んだとき、どのように考え、行動していきますか。
新しい求人を探したり、人材紹介会社に登録したりと、外に出るために条件を見ながら動き出す方が多いかもしれません。人材紹介会社からは多くのスカウトメールや求人紹介が届き、立ち止まる間もなく転職活動が進んでいくこともあるでしょう。
しかし、キャリアコンサルタントの視点から見ると、漠然とした状態で動き出すのは時期尚早ではないかと思います。転職が当たり前の時代ではありますが、キャリア形成をしていくためには、転職やキャリアチェンジが自分にとってどのような意味を持つのかを考えながら動くことが必要です。
キャリア形成の5つのステップ
キャリアの意思決定には5つのステップがあります。職業や進路選択をするにあたり、以下の順序で進めることで、自身にとって納得した意思決定につながります。
ステップ1. 自己理解:自分と向き合い、自分を知る
ステップ2. 仕事理解:今いる環境や社会、仕事を知る
ステップ3. 啓発的経験:実際にやってみる、経験してみる
ステップ4. 意思決定:自ら選択し、決める
ステップ5. 方策の実行:目標に向けた実際の行動
特に、ステップ1の「自己理解」が重要です。自己理解がないまま仕事を探したり、転職を決めてしまったりすると、本当に自分の歩みたいキャリアとかけ離れたものになりかねません。また、この「自己理解」ができていれば、次のステップ以降の意思決定の軸にもなります。
ステップ1. 自己理解
まずは自分の内側を整理し、理解する段階です。
▪興味:何が好きか。何をしているときにわくわくするか。夢中になれることは何か
▪能力:苦労せずにできること、得意なこと。人からよく褒められること
▪価値観:何を大切にしたいか。自分にとって働く意味や譲れない条件
これらを文字にして可視化していきます。はじめは、なかなか考えを書き出せないかもしれません。その場合は、「やりたくないこと」「苦手なこと」などから考えてみるのもヒントになります。
ステップ2. 仕事理解
自分の外側にある「仕事の世界」を具体的に調べる段階です。
▪職種・業種:どんな仕事があり、どんな役割があるか
▪雇用条件:給与、勤務時間、休日、将来性はどうか
▪求められる要件:その仕事に就くために必要な資格や経験は何か
ここでのポイントは、現職も一緒に比較に入れることです。不安や焦りを感じると、どうしても今の環境ではない新しい仕事や新しい環境に身を置くことを考えてしまいますが、実は現職の中で叶えられることや活用できる社内制度について、十分に知らないこともあるからです。
ステップ3. 啓発的経験
頭で考えるだけでなく、「実際に体験して視野を広げる」段階です。
▪職場見学、ボランティア
▪実際にその仕事をしている人に話を聞く
これらが抜けると、理想と現実のギャップである「リアリティ・ショック」が大きくなります。インターネットでさまざまな情報が得られる時代でも、実際に自分の肌で感じることが大切です。
ステップ4. 意思決定
「自己理解」と「仕事理解」を照らし合わせ、目標を絞り込む段階です。
▪いくつかの候補から優先順位をつける
▪「これで行く!」という決断を下す
もし、この段階で不安を感じることがあるのであれば、再度ステップに戻り、候補を増やしたり、さらに深掘りしたりして、判断できる状態に整えていきます。
ステップ5. 方策の実行
決めた目標を達成するための具体的なアクションプランを立て、実行します。
▪社内制度を利用する
▪履歴書・職務経歴書の作成
▪資格取得のための勉強開始
具体的な内容であればあるほど分かりやすく、自分自身も行動しやすくなります。
無理にステップを一方向に進めるだけでなく、必要に応じて戻りながら、自分が納得できる意思決定をしていくことが大切です。今、キャリアに迷いがない人でも、自分と向き合い、得意・不得意、やりたいことを明確にして「自己理解」を深めておくことで、チャンスが訪れたときに迷わずチャンスをつかむことができます。自分の内側の声に耳を傾けながら向き合っていくことが、自分らしく働き続けるキャリア形成につながっていくのです。
【記事】小熊 貴恵(アパレルメーカー人事/国家資格キャリアコンサルタント)
新卒からアパレルメーカーに勤務。販売職で接客サービスを学んだ後、人事として採用・配属・教育・評価など幅広く携わる。人事歴18年。2024年、国家資格キャリアコンサルタント取得。二児の母。














