【少子化社会対策大綱】生きづらさ・産みづらさの課題解決に向けて 〜女性活躍推進法と共に考える少子化対策〜

 2025年に向けた子育て施策の指針となる、第4次「少子化社会対策大綱」が2020年5月29日、5年ぶりに閣議決定されました。

 厚生労働省が発表した2019年人口動態統計によると、昨年1年間に生まれた子どもの数は、86万5234人。統計開始から初めて90万人を下回り、女性1人が生涯に産む子どもの推計「合計特殊出生率」も1.36と低下しました。
※合計特殊出生率:調査年次の15~49歳までの女性の年齢別出生率の合計(1人の女性が年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数)

厚生労働省:令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況

 この「合計特殊出生率」を都道府県別にみると、最も高いのが「沖縄県」1.82で、次いで「宮崎県」1.73、「島根県」1.68、「長崎県」1.66、「佐賀県」1.64。
もっとも低い「東京都」は1.15で、次いで「宮城県」1.23、「北海道」1.24、「京都府」1.25、「埼玉県」1.27。

 「86万ショック」と表現された今回の第4次「少子化社会対策大綱」は、未婚・晩婚化が最大の要因とみて、結婚や子育てに希望を描ける環境の整備に向け、広範な施策が掲げられています。

●妊娠・出産に関する経済的支援拡充
●不妊治療にかかる医療保険など費用負担の軽減
●児童手当の給付対象の拡充
●育休分割取得検討・男性の育休取得の推進
●雇用安定に向けた正社員化支援
●AIを活用した結婚支援

目立った成果がない30年に及ぶ少子化対策
「希望出生率1.8」の達成に向けて

 子どもがほしい人の希望がかなった場合に見込める出生率「希望出生率1.8」。

 1990年、前年の合計特殊出生率が過去最低を更新した「1.57ショック」から30年。2005年には過去最低の「1.26」に落ち込み、2015年には「1.45」まで改善したものの、2019年は、2017年の「1.34」に次ぐ低さの「1.36」となりました。

 この「希望出生率1.8」という数値は2015年に掲げられ、以降は子育て支援も大幅に拡充。消費税率引き上げの増収分も幼児教育無償化などに振り変えるなどの対策は行ってきましたが、出生率の低下は止まっていません。

 5年前の大綱で掲げた数値目標も多くが未達成のままで、30年に及ぶ少子化対策は、目立った成果がないのが現状です。政府や自治体は、課題を検証し、強い危機感をもって効果的な施策を展開することが求められます。

その中で、今回新たに2025年までの数値目標が掲げられました。

●第1子出産前後の女性の継続就業率:70%(2015年:53.1%)
●男性の育休取得率:30%(2018年:6.16%)
●保育所待機児童数:解消(2019年:1万6772人)

 大きな課題の一つでもある男性の育休取得率。現在は約6%の取得率を2025年に5倍の30%達成に向けて、男性が家事・育児に参画しやすくなるよう、育休や給付金のあり方、取得を後押しする企業支援、そして、男性目線で構築してきた「企業の風土改革」も重要になります。

次世代への支援は未来への投資

 まさに「国難」である「少子高齢化」。このまま進行すれば国力が衰え、我々国民の暮らしに大きな影響が及んできます。

 今回の「少子化社会対策大綱」には下記の通り、力強いメッセージが記載されています。

(少子化危機は、克服できる課題である。)
フランスやスウェーデンは、子育て支援の充実や仕事との両立支援策など、長期にわたる少子化対策により、一旦は低下した出生率が 2.0 程度までの回復に成功した。
また、国全体としてみれば少子化が進行し続ける我が国においても、少子化対策に真剣に取り組み、子育てしやすい環境を整備する努力を地域全体で行ってきた結果、高い出生率を保ち、又は、出生率が上昇した地方自治体も出現している。少子化は、決して解決不可能な課題ではない。

 ところが、日本は先進諸国の中で少子化対策への支出が手薄で、大きな成果が出ていない今、使い道も課題です。

 少子化対策の総額である「家族関係社会支出」は8兆6600億円(2017年度社会保障費用統計)。8800億円が消費税増税に伴い上積みされますが、フランスやスウェーデンなど欧州諸国とはまだまだ開きがあります。

 新型コロナウイルス対策として巨額の財政支出が行われています。もちろん目の前の経済の立て直しは重要ですが、将来を見すえた「少子化対策」への財源確保も同様に重要です。
次世代への支援は未来への投資であり、少子化対策が後回しにならないようしっかりと向き合い、努めていく必要があると考えます。

「女性活躍推進法」と共に考える「少子化対策」

 同じく一部改正する法律が成立した「女性活躍推進法」。これは「少子化社会対策大綱」と関連している要素が多く、共に考える必要があります。

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 仕事と子育ての両立を阻む「長時間労働」。女性に偏りがちな「家事・育児負担」など、女性が一人で育児を担う「ワンオペ育児」を無くすために、男性も子育てに寄り添える環境整備と支援の充実、意識改革を行っていかなければ「希望出生率1.8」の達成は困難になります。

 新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、テレワークなどが推奨され、働き方が大きく変わってきました。男女の家事・育児負担の平等化、女性の出産後の再就職は出生率の改善に効果があるとされています。

 すでに通勤ラッシュが戻りつつあるニュースも流れていますが、働き方や生活様式を見直す契機にし、子育てしやすい労働環境の構築に努めなければなりません。

結婚や出産は選択の自由

 もちろん結婚や出産は個人の自由な選択。人それぞれに人生の選択肢「生き方」「働き方」があります。
「女性活躍推進法」とともに女性の社会進出が加速されている中、この「少子化問題」が価値観の押しつけやプレッシャーとならないよう、どのように解決していくのか。

 一人ひとりが幸せに生きられる社会実現に向けて、まずは社会としての「生きづらさ」「産みづらさ」の課題の解消が最優先になります。

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