【旅育のはじまり】子どもと共に学ぶ保育園留学の経験

「旅育」という言葉をみなさんは聞いたことがありますか?
「旅育」とは、子どもたちが旅行を通じて様々な体験をすることで学び、成長することを表したワードになります。

私は都内に在住する会社員で、現在小学校二年生になる息子と、年長の娘がおります。
息子が年少の頃から母一人子一人の母子旅をよくするようになり、最初は1泊2日、次は2泊3日・・と宿泊数とともに旅行に行く距離を少しずつ伸ばすようになりました。
これまで八ヶ岳や那須、北海道など日常を飛び出して、自然を感じられる場所を求めて、旅行をしてきました。

平日子どもたちとまとまって関わる時間を取ることが難しいため、ワーキングマザーを始めてしばらくして、「まとまったお休みをとって、一人ずつ子どもたちを連れ、非日常の体験をしよう!」と考え、実行に移すようになりました。

子どもを一人ずつにした理由には親一人、子二人だと私自身の余裕のなさから、最終的にイライラしてしまい、なかなかその場・その瞬間を全力で楽しみきれないということが起こってしまうためです。お互いに時間を忘れて、ゆっくり会話をしたり、その空間を楽しめるように、必ず母子1対1で旅行に行くということにこだわりました。

家族皆で行く家族旅行も大切にしていますが、毎年恒例の“お母さん独り占めタイム”なる、“母子旅行”をどこに行くのか、いつ行くのかを考えるのは私自身の楽しみにもなっていました。母子旅行をするようになって2年以上経ち、子連れでのお出かけにもだいぶ慣れてきた頃、ある劇的な出会いをすることになります。

保育園留学との出会い

SNSを見ていて、ある情報に目が止まりました。それは北海道厚沢部町での保育園留学です。見た瞬間、「これだ!」と雷に打たれるような衝撃を感じたことが昨日のように思い出されます。

「保育園留学」は、1〜2週間家族で地域に滞在する、子ども主役の暮らし体験です。子どもは地域の保育園に通いながら、家族で現地に滞在します。北海道から九州まで日本全国へのワーケーションを伴った保育園への登園が可能です。

クリックして最初に飛び込んでくる素敵な風景に圧倒され、ひと目見た瞬間に直感的に「これだ!」と思いました。留学プログラムの趣旨や官民連携で町づくりに着手しているというところにも魅力に感じました。

母子旅行をしている中で、「一時的ではなく、もう少し長期で滞在できる方法はないか」、と「今の日常が当たり前ではないことを知る経験を旅行以外でないか」を模索していた頃だったので、その願いをドンピシャで叶えてくれるサービスだと感じました。

ある程度母子旅行をしてきて自信もついたことと、まだ見ぬ世界を体験したい想いで、リモートワークが可能な私とは対照的に夫はリモートワークが出来ない仕事のため、ワンオペで子ども二人を連れて保育園留学をしようと思い立ったのでした。

2022年1月中旬に9月の日程を申し込み、翌月中旬に日程確保のご連絡を事務局からいただいた際は夢かと思いました。こうして保育園留学が現実のものとなりました。

保育園留学中の過ごし方

保育園留学中、平日子どもたちは保育園へ登園し、私は住居でリモートワークをしました。休日は近所を散策したり、お店巡りをしたり、虫採りをしたり、いくら時間があっても足りないほど充実した日々を過ごしました。

都内に住んでいると公園では「ボール禁止」「大きな声で話さない」など、周囲の迷惑を考えながら、色々な制約の中で子育てせざるを得ません。保育園留学中の暮らしは制約がない中で、子どもたち一人ひとりの個性に目を向けてくださる保育園の先生方の保育スタイルもあり、日々顔つきが明るく、より表情豊かになっていく様子が手に取るようにわかりました。

私自身の子どもたちにかける言葉も「静かにしてね」「走らないでね」という言葉から、「よーし、あそこまで走ってみよう」だったり、「そんなに高いところまで登れるの?」といった肯定的な言葉が自然と増えていました。そのおかげもあり、ワンオペが全く苦ではない、二週間でした。

保育園留学を通して変わったこと

保育園留学を通して一番変わったのは私自身と、私の話を聞いて感化された夫の価値観でした。
「子育てにおいて大切にしたいことは何か」「家族としてどうありたいか」をふと立ち止まって考えることが普段の日常の中では難しいのですが、いつもの日常とは離れ、いつもと違った暮らしをすることで、「本当はこうしたいのかもしれない・・」と当たり前の考えを見直すきっかけにもなりました。
考え方や感じ方はフラットでもいたいものですが、日常の生活の延長戦上ではなかなかその見直しは難しいと感じていました。

今回の経験を通して「教育や子育てってなんだろう?」と初心に立ち返ることが出来ました。できれば良い環境に、そして良い教育を、親としてそう考えてしまいがちですが、そもそも良い環境とはなんでしょうか?

子どもたちがありのままでいられる環境、やりたいことを見つけて、やり抜くことができる環境、選択肢を狭めず、自分で選び、自分でトライすることが出来る環境・・?

保育園留学をきっかけに子育てや教育に関する価値観を徹底的に夫婦ですり合わせることが出来ました。我が家は子育てに関して頻繁に話す夫婦ではあると思いますが、今後子どもたちに対して親としてどんな機会を提供していきたいか、出来るかを会話出来たこともあり、途中まで進めていた小学校受験を辞める決断もしました。

まさかこの二週間の経験が、こんなにも私たち夫婦、そして家族にとって意味のあるものなるとは思ってもみませんでした。

保育園留学を経験した子どもたち

保育園留学中は大自然の中で思いっきり身体を動かし、みんなでクッキングをしたり、収穫体験に行ったりと都内の保育園では年に一度の一大イベントしてあるようなものが三日に一回くらいの頻度であり、息子も娘も毎日楽しみに参加していました。

保育園からの先生からいただく連絡帳にもイキイキとした表情で映る子どもたちの表情と様子を伺うことができ、子どもらしさ全開で満面の笑顔の子どもたちの顔が今でも思い出されます。「躍動している」ってこういうことなのかもしれない・・と思ったほどです。

見知らぬ土地でもたくさんのお友達を作ることが出来るという経験。
初めての体験だらけでも楽しい毎日を送ることが出来るという自信。
生活を他の場所でも変わらずしていくことが出来るという気づき。
野菜や果物を作って収穫して、お料理をする喜び。

など、保育園留学は私たち家族にとってたくさんのギフトを与えてくれました。

保育園留学をしてからまもなく二年が経とうとしています。今でも子どもたちの口から「〇〇先生、元気かな?」「あの時のお祭りでお神輿担いだよね?」「お料理の時の包丁使うの結構難しかった」など昨日経験したかのように、思い出が口をついて出てきます。

未就学児のうちは、手も身体も寄せ合い、親も子も一緒に成長していくタイミングです。
今息子が小学生になり、徐々にその握っていた手を離すタイミングを考えていかなければいけない時が少しずつ迫っていると感じています。

どんな経験というギフトをこれからプレゼントできるでしょうか。

保育園留学という手段ではなくても、日常から少し離れて、ゆっくり生活スタイルや子育て、自分自身の働き方を見直すことはとても大切だとこの情報過多な時代だからこそ思います。

先が見通せない今の時代をどう舵取りして、楽しい航海にしていくのか、そのオールは家族みんなの手に握られています。
たまに一息、違う海へ出る機会を意識的に作ってみませんか?

【記事】林 里奈(IT企業 人事)
新卒から勤めるIT企業で人事に携わりながら、ブログ執筆などの発信活動にも従事。プライベートでは、小2・年長の2児の母。キャリア×子育ての両立の体現に日々奔走中!
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